脳腫瘍
私どもの施設では、下記の領域を中心とした全ての領域の脳腫瘍に対し、最先端の治療を行なっております。
- 悪性腫瘍(あくせいしゅよう):神経膠腫(グリオーマ)、悪性リンパ腫、転移性脳腫瘍、など
- 頭蓋底腫瘍(ずがいていしゅよう):髄膜腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、など
- 間脳下垂体腫瘍(かんのうかすいたいしゅよう):下垂体腺腫、ラトケ嚢胞、など
- 小児脳腫瘍(しょうにのうしゅよう):髄芽腫、胚細胞腫瘍、など
以下に、代表的な疾患につき解説いたします。
神経膠腫(しんけいこうしゅ)【glioma(グリオーマ)】
脳実質より発生する悪性腫瘍であり、手術、放射線療法、化学療法を組み合わせた治療が行われます。手術では、脳の機能を温存しつつ腫瘍を摘出する必要があります。
私どもの施設では、脳機能マッピング/モニタリング、5-アミノレブリン酸術前投与、ニューロナビゲーションシステムなどの最先端技術を用いることにより、それを実現しております。
中でも、覚醒下手術を含む脳機能マッピング/モニタリングに関しては本邦において最も古い歴史を有しており、脳神経の機能を最大限に保護することが可能です。また、術後の化学療法においては、標準的な化学療法に加え、詳細な病理診断や遺伝子解析に基づくオーダーメイド治療を実施しております。さらに、分子標的薬も積極的に使用しております。各種臨床治験への参加をご提案することも可能です。
下垂体腺腫(かすいたいせんしゅ)【pituitary adenoma】
下垂体から発生する良性腫瘍です。下垂体は、脳から垂れ下がるようにして頭の中心に存在する臓器であり、ホルモン産生の中枢としての役割を担っています。下垂体腺腫が各種ホルモン(成長ホルモン、ステロイドホルモン、甲状腺ホルモン、乳汁分泌ホルモン、性ホルモン)を過剰に分泌することで、様々な症状を引き起こします。また、下垂体の傍を視神経が通ることから、視野視力障害の原因にもなります。私どもの施設では、神経内視鏡を使用した経鼻的なアプローチにより、低侵襲で安全な腫瘍摘出術を行なっております(内視鏡下経蝶形骨手術)。この治療方法には、ハイビジョンカメラ搭載型神経内視鏡やニューロナビゲーションシステム、内視鏡支持器など様々な特殊機械が必要であり、全国でも限られた施設でしか行うことができません。私どもの施設では今までに多数の内視鏡下経蝶形骨手術を行なっており、良好な治療成績を上げて参りました。内分泌内科や眼科、耳鼻咽喉科、歯科など関連する専門科が揃っていることも大きな強みになっております。
髄膜腫(ずいまくしゅ)【meningioma】/ 神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)【schwannoma】
脳を覆う髄膜より発生する髄膜腫および聴神経などの脳神経より発生する神経鞘腫は、病理学的には良性腫瘍に分類されますが、発生する部位によって様々な症状を引き起こします。これらの腫瘍は手術が難しい部位(頭蓋底部や脳幹部周辺、小脳橋角部など)に発生することも多く、その摘出は必ずしも容易ではありません。私どもの施設では、脳機能マッピング/モニタリングやニューロナビゲーションシステム( 神経膠腫の項をご参照下さい )を駆使することにより、脳神経機能の温存を図りつつ手術を行っております。
悪性リンパ腫(あくせいりんぱしゅ)【malignant lymphoma】
神経膠腫同様、悪性腫瘍であり、手術、放射線療法、化学療法を組み合わせた治療が行われます( 神経膠腫の項をご参照下さい )。リンパ腫は多臓器にまたがって発症することがある腫瘍です。私どもの施設には各領域の専門科が揃っているため、連携し合って治療を行うことが可能です。
小児脳腫瘍(しょうにのうしゅよう)【pediatric brain tumor】
私どもの施設では各種の小児脳腫瘍に対して手術、放射線療法、化学療法を組み合わせた治療を行なっております( 神経膠腫の項をご参照下さい )。私どもの施設には小児科医師やリハビリテーション科医師、放射線治療科医師、病理診断科医師、看護師、保育士、臨床心理士、社会福祉士などの多職種からなる小児脳腫瘍治療チームがあり、様々な角度から患者様やご家族をサポートする体制が整っております。
転移性脳腫瘍(てんいせいのうしゅよう)【metastatic brain tumor】
私どもの施設では、転移性脳腫瘍を摘出し、病理学的診断に基づいて原発巣を特定することで、各専門科と連携しながら治療を行うことが可能です。また、原発巣が既知の場合には、ガンマナイフ治療も積極的にご提案しております。ガンマナイフ治療とは、通常の放射線治療に比べ、正常脳への影響が少なく、高い治療効果が期待できる定位的放射線治療のひとつです。
脳腫瘍研究(のうしゅようけんきゅう)【neuro-oncology research】
私どもの施設には最新の研究設備が整っております。また、本学他学部や他大学とも積極的に連携し、基礎研究を行っております。海外留学も積極的に行うことで、これまでに多くの実績を積んで参りました。多施設共同研究にも多数参加しております。大学院医学研究科では多くの研究者が脳腫瘍分野の基礎研究を行っており、その成果は国際雑誌に多数掲載されております。研究業績につきましては、日本大学研究者情報データベースをご参照下さい。
患者様へ
脳腫瘍の治療は一朝一夕に終わるものではありません。手術をはじめとする様々な治療、そして多方面からのサポートが必要になることもあります。私どもの施設では、あらゆる脳腫瘍に対する各種治療方法を選択することが可能であり、多くの患者様を治療してきた実績がございます。また、脳腫瘍治療においては、病気(病院)と長期間に渡って付き合っていかなければならないこともあります。そのため、担当医師との信頼関係が極めて重要になります。患者様にご満足頂ける治療を目指し、誠心誠意ご対応させて頂きますので、いつでもご相談ください。他院からのご紹介やセカンドオピニオンも随時お受けしております。
研修医および医学生の皆様へ
私どもの教室は脳腫瘍領域の臨床および研究において多くの実績を有しております。近年、脳腫瘍の治療は飛躍的に進歩しておりますが、まだまだ未知の領域が多く治療が難しい分野です。私どもと共に脳腫瘍の治療および研究に切磋琢磨できる仲間を心より歓迎いたします。研修や見学は随時お受けしております。